2012年9月20日木曜日

未知の海底世界

地球上で最も探査が進んでいない領域、それは「海底」だ。水深が平均4,000mにもなる海洋底は、月や金星とくらべても測量が進んでおらず、測量された海域は全体の15%にとどまる。

海底の動きを見ると、太平洋が「徐々に狭まっている」のが分かる。東太平洋海膨では一年に最大22cmずつ新たな海底が生まれている一方で、古い海底は周縁部の海溝からマントルへと沈み込んでいるからだ。

また、南北アメリカ大陸は一年に約25mmずつ、大西洋を隔てたヨーロッパやアフリカ大陸から「遠ざかっている」。それは大西洋の中央に位置する世界最長(2万km)の海底山脈・大西洋中央海嶺が、海底から東西に広がっているためだ。



出典:NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2012年 09月号
特別付録「世界の海底」

都市、バンザイ


「村では女性が夫と親族に従い、雑穀を粉にひいて歌うのが全てだった(Whole earth discipline)」

そんな時代は今や昔、2008年に農村人口と都市人口の逆転が起こり、いまや世界の都市人口が総人口の半分を超えている。20世紀に入り、都市人口は2億5,000万人から28億人へと10倍以上に急増したのである。



かつて、アメリカの建国の父たちは、都市を「貧困と犯罪、環境汚染、不健康の中心」であると考えていた。しかし、それは本当か?

上下水道への投資の甲斐あって、先進諸国の都市は疫病の巣から健康の砦に変わった。自動車事故やピストル自殺による死亡リスクは都市生活者の方が低い。

ちなみに、世界10大都市域のランキングでは、ずっと日本の東京都市圏(人口3,670万人)が1位だ。



出典:日経サイエンス 2011年 12月号
「都市の力 知恵を生む場所」

祖父母に栄えた人類は、祖父母に耐えられるのか?


クラピネ遺跡(クロアチア)から発掘された「ネアンデルタール人」で、30年以上生きた者は皆無だったという。また、シマデロスウエソス遺跡(スペイン)においても、35歳以上生きた個体はマレであった(歯の摩耗具合をもとに推定)。

ネアンデルタール人すべての寿命が30歳前後だったかどうかは不確かにせよ、その寿命は現生人類よりもはるかに短かったことが推測されている。

もし、15歳で子どもを産むとしても、その親が祖父母になるのは30歳。そう考えると、少なくとも30歳以上まで生きなければ、子・親・祖父母の3世代は揃わない。つまり、30歳以上まで生きるのがマレだったネアンデルタール人たちには、「祖父母があまりいなかった」と考えられる(成人10人に対して、祖父母は半分以下の4人)。



一方、ヨーロッパにいた現生人類はネアンデルタール人よりも長寿であり、成人10人につき、祖父母層はその倍の20人は存在したと推定されている。つまり、我々現生人類は3万年ほど前から、「祖父母」という家族形態をとっていたと考えられるのである。これは動物界では極めて異例のことである。なぜなら、普通の動物は次世代を生み育てれば、親世代は死ぬのだから。

そして、その祖父母たちの知恵や伝承が、さらに現生人類の寿命を伸ばしたとも推測される。この長寿命化(高齢化)の好循環は現生人類の人口増をもたらしたであろうから、今の繁栄の礎にもなったものと思われる。

ところが現在、凄まじいまでのスピードで進んだ高齢化は、人類にとっての重い負担ともなりはじめており、かつての好循環は悪循環ともなりつつある。しかしまあ、高齢化により栄えた人類が、その高齢化で衰えようとしているのは、なんとも皮肉な因果ではあるまいか。



出典:日経サイエンス 2011年 12月号
「祖父母がもたらした社会の進化」

北欧のスマートな自動車と自転車


ストックホルム(スウェーデンの首都)の道路料金の課金システムは、市の中心部に入ってくる自動車のナンバー・プレートをカメラが自動で認識し、どこに行くかに応じて、一日に60クローナ(670円)を上限に、運転者に通行料金を請求する。

このシステムの導入によって、自動車が都市中心部を通り抜ける際の待ち時間が最大50%削減され、そのお陰で汚染物質の排出量も最大15%減ったとされている。



また、コペンハーゲン(デンマークの首都)の自転車には、後輪に赤い円盤のようなものが取り付けられているのを目にする。これは「コペンハーゲン・ホイール」と呼ばれるもので、この赤い円盤を手持ちの自転車に取り付ければ、電動アシスト自転車に変えられるという優れモノである。

この赤いホイールはスマートフォンによって制御されており、気温や湿度、大気汚染度などを測定して、リアルタイムの環境データベースに送信される。




抜粋:日経サイエンス 2011年 12月号
「都市の力 進化するソーシャルネクサス」

数学は「発明」されたのか、それとも「発見」されたのか?


もし、この世の「知性」が人間ではなく、「太平洋の深くにたった一匹で漂っているクラゲ」に宿っていたとしたら?

はたして「数の概念」が生まれ得たであろうか。数える対象ももたぬクラゲの知性に…。





このクラゲの”たとえ”は、「数学は『発明』されたのか、『発見』されたのか」という問いに基づくものである。人類は数千年間もこの問いの答えを見いだせずにいる。

「発明」となれば、「数」は人間が生み出した「道具」となるし、「発見」となれば、「数」は人間とは関わりのない「独立した存在」、言うなれば「神がつくり給うたもの」となる。



少なくとも、数学は人間の「経験」とは独立した「思考の産物」であると言うことはできる。数それ自体が実体を持つわけでもなければ、触れるものでもない。しかしそれでも、数学は現実世界を簡明かつ正確に表現する。

たとえば、量子電磁力学を用いて計算した電子の磁気モーメントの「理論値」は、最新技術によって「実験的に測定した値」と、1兆分のいくつというわずかな違いで一致していた(1.99115965218073)。

また、古い例をあげれば、スコットランドの物理学者・マクスウェルが書いた4本の方程式は、電波の存在を「予測」していた(1860年代)。実際に電波が検出されるのは、それから20年近くも後の話である。

なんと数学の記述する世界の正確なことか。「これほどうまく合致するのは、なぜなのか?」と、かのアインシュタインも頭を悩ませている。





「数学は発明なのか、発見なのか」

はたして深海の一匹のクラゲは、何かを数えようとするのであろうか?



ここで一つ注意しておくべきことは、たとえ数学がいかほど正確に世界を記述しようとも、まだまだ「数学的予測」が不可能な現実が山ほどあるという事実である。

たとえば、経済学では多くの変数を定量解析することに失敗している。もし、これが成功していたら、世界に景気後退などなくなるはずなのだから…。



しかし、逆に考えれば、数学に「限界がある」ということは、これは人間の「発明」に近いのかもしれない。ヒューマン・エラーは我々人間の得意とするところである。

まあ、ただ単に我々人間が「知らない変数」がまだまだたくさんあるだけの話かもしれないが…。そうであるのなら、我々はまだまだ「発見」する必要がありそうだ。





出典:日経サイエンス 2011年 12月号
「数学が世界を説明する日」

なぜ、ハワイのマウナケア山は「世界一高い」のか?

太平洋に浮かぶ熱帯の島・ハワイにありながら、山頂で雪が降る巨大火山。ハワイの人々はこの山を「マウナケア(白き山)」と呼んだ。マウナケア山の標高は4,205mだが、海中部分を含めれば高さ9,966m、「世界一高い山」となる。

エベレストの山頂が8850mと、地球上でもっとも高い位置にあることに疑いはないが、「山体の大きさ」となるとマウナケア山には敵わない。

エベレストはヒマラヤ山脈という巨大な山脈に乗っかていることもあり、山麓から山頂までの高さは3,000m強にすぎない。一方、マウナケア山の山麓は水深5,760mほどの海底にあり、山体としての大きさは9,966mにも及ぶのである。



出典:NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2012年 09月号
「ハワイ島マウナケア 太平洋にそびえる“世界一高い山”」

都市のマジック。プラス15%の法則


都市は人口が多いほど、「分け前」も多い。

たとえば、ある都市の人口が2倍になると、その平均所得は2倍以上になるという。ボーナス的に「プラス15%」が加算されるのだ。この法則は、人口4万の都市が8万になろうが、その100倍の400万都市が800万になろうが、変わることなく機能する。

一方で、都市が必要とする資源やエネルギーに関しては、これと全く逆の法則が成り立つ。都市の人口が2倍になれば、インフラ設備(電気・水道・道路など)が2倍必要となるわけではない。それよりも「マイナス15%」少なくて済むのだ。



都市の人口が増えるほどに、生産性が増して収入が15%上乗せされ、その一方で出費は15%もカットできる。これが「都市マジック」だ。

さらに、人が集まるほどイノベーション(革新)も加速する。古くはプラトンとソクラテスが都市国家アテネに、ガリレオとミケランジェロはルネサンス期の都市フィレンツェに、そしてスティーブ・ジョブズとウォズニアックはシリコンバレーの大都市圏に暮らしていた。都市におけるイノベーションの加速は、特許出願数の増加となって現れる。



なぜ、都市ばかりが不思議な動きを見せるのか?

人口が増えれば、非効率なことは排除される力が働く。たとえば、高い家賃を払っているのなら、それに応じて価値の高いものを生み出す必要が生じる。その結果、収益性が高まれば、都市の価値が上がり、家賃はもっと高くなる。そうなれば、さらに相当の価値を生み出さなければならなくなる。

こうしたフィードバック・メカニズムが、都市の富、そしてイノベーションを常に「人口増加分プラス15%」に保ち続けるのである。



出典:日経サイエンス 2011年 12月号
「少ない資源から多くを生み出す都市」