2017年5月12日金曜日

終末期医療: End-of-life care[The Economist]


終末期医療:
End-of-life care

より良き最期を迎えるために
How to have a better death







死は避けられないが、
Death is inevitable.

つらい死は避けられる。
A bad death is not.



 1662年、数字に強いロンドンの小間物商ジョン・グラントが、人の死を定量的に分析した本を世界で初めて世に問うた。
In 1662 a London haberdasher with an eye for numbers published the first quantitative account of death.

結核菌のせいでリンパ腺が腫れる「瘰癧(るいれき)」という病気(当時は、国王に触ってもらえば治ると信じられていたため「国王病」と呼ばれていた)で亡くなったのは何人だったかというように、死者の数を原因別に数えたのだ。
John Graunt tallied causes such as "the King's Evil", a tubercular disease believed to be cured by the monarch's touch.

 死因の中には不思議なもの、詩的にさえ聞こえるものもある。
Others seem uncanny, even poetic.

1632年のロンドンでは15人が「おのれを殺め」、11人が「悲嘆のあまり」死亡し、2人が「深い眠り」に陥ったという。
In 1632, 15 Londoners "made away themselves", 11 dead of "grief" and a pair fell to "lethargy".

 グラントの著作からは、近代医学が生まれる前の死が突然やってくる恐ろしいものだったことがうかがえる。
Grant's book is a glimpse of the suddenness and terror of death before modern medicine.

また、それは早く訪れるものでもあった。
It came early, too:

20世紀になるまで、人間の平均寿命はチンパンジーのそれと同程度だったのだ。
until the 20th century the average human lived about as long as a chimpanzee.

 今日では科学が発達し、経済も成長するようになったため、人間より長生きするほ乳類は陸上には存在しない。
Today science and economic growth mean that no land mammal live longer.

だが、その意図せぬ結果は、人間の死を医療体験に変えてしまうことだった。
Yet an unintended  consequence has been to turn dying into a medical experience.

 人がいつ、どこで、どのように亡くなるかは、この100年間で変化してきた。
How, when and where death happens has changed over the past century.

比較的最近の1990年まで、世界全体の死の半分は慢性疾患によるものだったが、
As late as 1990 half of deaths worldwide were caused by chronic diseases;

2015年にはその割合が3分の2に高まっている。
in 2015 the share was two-thirds.

また、裕福な国々では、病状の改善と悪化を数年にわたって繰り返した末に亡くなるケースがほとんどになっている。
Most deaths in rich countries follow years of uneven deterioration.

 さらに、ざっと3分の2の人は病院か高齢者向け福祉施設で最期の時を迎えている。
Roughly two-thirds happen in a hospital or nursing home.

それも、懸命な治療を最大限に受けた後でそうなることが多い。
They often come after a crescendo of desperate treatment.

米国では今後、65歳以上で亡くなる人の3分の1近くが、人生最後の3カ月間を集中治療室(ICU)で過ごすことになる。
Nearly a third of Americans who die after 65 will have spent time in an intensive-care unit in their final three months of life.

ほぼ5分の1は、最後の月に手術も受ける。
Almost a fifth undergo surgery in their last month.

 こうした熱心な治療は、本人やその周囲の人々すべてに苦痛をもたらすことがある。
Such zealous intervention can be agonising for all concerned.

概して言えば、病院で亡くなるがん患者は、ホスピスや自宅で亡くなる同様ながん患者よりも痛みやストレスを強く感じ、気分の落ち込みも著しい。
Cancer patients who die in hospital typically experience more pain, stress  and depression than similar patients who die in a hospice or at home.

また、がん患者が病院で亡くなった場合には、遺族が医師と口論したり、遺族同士で言い争ったり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんだり、悲しみから立ち直るのに長い時間がかかったりしがちだ。
Their families are more likely to argue with doctors and each other, to suffer from post-traumatic stress disorder and to feel prolonged grief.






The Economist [UK] Ap 29 - 5 2017
日本語訳:JP Press「終末期医療:より良き最期を迎えるために



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