2016年12月15日木曜日
Netflix [リード・ヘイスティングス]
〜『English Journal』2016年2月号より〜
2015年5月、ドイツ・ベルリンで行われたメディア・コンベンションで、ネットフリックス社の創業者兼CEOのリード・ヘイスティングス(Reed Hastings)が、独自のビジネス展開や企業精神などについて語ります。
膨らむ期待
Great Expectations
アリーナ・フィヒター:
Alina Fichter:
ドイツでサービスを開始したとき、ほかの多くの国同様、一大プロモーションが行われましたね。
It was a big hype in Germany, as in many other countries, when you started your service there, I think.
そして、大規模な宣伝があれば大きな期待が寄せられるもので、その後、大きな失望もやってきました。
And so, with big hype, there are big expectations coming, and then there was a big disappointment
というのも、ドイツにおけるネットフリックスのサービスでは、さほど多くのコンテンツが配信されていないためです。
because the Netflix service in Germany doesn't really show very many things.
なので(人々は)「ドイツで加入者になるわけないじゃない」(という気分になったのです)。
So, why, why become a subscriber in Germany?
リード・ヘイスティングス:
Reed Hastings:
そうですね、私たちは、それをスポティファイ効果と呼んでいます。
Yeah, we call that the Spotify effect.
つまり、人々はネットフリックスが、音楽にとってのスポティファイのようなものであれば、と願っているのです。
So, people, want, uh, Netflix to be like Spotify is to music --
あらゆるコンテンツが見られるということですね、現在より高額にならざるを得ないとしても
to have all the content, even if it had to be more expensive than it is.
私たちだってそうであればよいと思います。
And we want that, too.
ただ、音楽業界は、非独占的ライセンス契約で成長しました。
But music grew up with nonexclusive licensing.
だから、どのラジオ局でも、あらゆる曲を流すことができたのです。
So, every radio station could play every song.
そうして業界が成長を遂げました。
That's how the business grew up.
ですから、スポティファイのようなオンラインサービスも、その非独占的なモデルを踏襲できるのです。
So, then the Internet services like Spotify can follow that nonexclusive model.
テレビ番組は、テレビ局の放送ネットワークと共に成長し、現在の各放送ネットワークはどこも独占的で、ネットフリックス(の参入)を締め出そうとしています。
TV show grew up with TV networks, and every network that exists is exclusive and tries to block Netflix.
だから、HBO(アメリカのケーブルテレビ会社)はコンテンツを持っていますが、私たちに使用させてはくれません。
So, HBO (Home Box Office) has content, they don't let us have it.
BBCも使わせてくれません。
BBC, they don't let us have it.
ですから、消費者にとっては残念なことに、動画の世界では、すべてが独占的なのです。
And so, unfortunately for consumers, in video, it's all exclusive.
そんな中、われわれがすべきことは、独自のコンテンツをつくり、その豊かな(視聴)体験をあらゆる方面に提供できるようにすることです。
And what we have to do is to create our own content to be able to provide that rich experience across the board.
この歴史的な業界の構造が、初期の落胆を招くのです。
And so, it's this historic industry structure that then creates that initial disappointment.
そして、私たちは、その落胆の埋め合わせをしようと、魅力的な価格設定をしたり、
And the way we try to make up for that disappointment is with great pricing --
ネットフリックスは月額わずか7.99ユーロですから
so Netflix is only 7.99 euros a month --
さらに、新作の『デアデビル』シリーズのような素晴らしいコンテンツを提供したり、しているのです。
and then with great content, like our new Daredevil series.
インターネットの美点は、個人仕様にできることです。
The beauty of the Internet is it can be personal --
子供向けも作れますし、ありとあらゆる好みに合わせられるのです。
we can make content for kids, all different tastes.
だから、ただ一つの番組が大成功を収める必要はないのです。
So, think of it as there's no one show that has to get big.
インターネットは、多様性と好みこそが命ですから。
The Internet is about diversity and taste.
ビッグデータを扱う
Using Big Data
フィヒター:
Fichter:
さて、データについてですが、御社の機能は、少し、脳の働きに似ていますよね。
OK, so, data, you work, like, a little bit like the brain works --
右脳半球があり、左脳半球があるという意味で。
you have a right hemisphere and a left hemisphere.
一方では、シリコンバレーを拠点とするデータ主導型の部分があり、他方では、ロサンゼルスを拠点とする、コンテンツ主導型の部分もあります。
One, like, data-driven in Silicon Valley, and then the content-driven in LA.
そんな中、制作するコンテンツに、データはどのような役割を果たすのですか?
So what role do data play for the content you make?
ヘイスティングス:
Hastings:
ええ、データは誤解されています。
Sure, data's misunderstood,
というのも、ビッグデータは大変素晴らしく、すべてを解決するはずだ、と言われますね。
because people say big data's so amazing, it should do everything.
それは必ずしも正しくない。
And that's really not true.
私たちが言っているのは、株を選ぶにはデータに頼るべきだが、配偶者を選ぶには自らの判断に頼るべきだ、ということです。
What we say is you should use data to pick stocks, but you should use your judgement to pick a spouse.
フィヒター:
Fichter:
ハハハ。
Ha-ha
ヘイスティングス:
Hastings:
二つはまったく異なる分野なのです。
They're really different fields.
ある分野が情緒的であればあるほど、自らの判断を信じるべきです。
The more emotional an area is, the more you wanna trust your judgement.
ある分野が分析的であればあるほど、データの利用がとても役にたちます。
The more analytic an area is, it is very useful to use data.
ですから、私たちは、たとえば番組のマーケティングを行うとき、人々がどんな種類の広告に反応するかを見るようなときに、データを使うことを試みています。
So, we try to use data, for example, in marketing the shows, seeing which types of ads people respond to.
でも、クリエーターに対しては、そのようなことは決してしません。
But with the creators, we never do that.
クリエーターには、自らの芸術的なビジョンに従うべきであり、データのために仕事をすべきではない、と話しています。
We tell the creators they've gotta follow their artistic vision and not try to work for the data.
クリエーターは、自らのビジョンで仕事をすべきで、その後、われわれがデータを活用して、適切な観客に宣伝するのです。
They need to work for their vision, and then we'll use the data to promote it to the right audiences.
だから、本当に、ビッグデータに関しては、どの活動分野でデータを使用したいか、明確にする必要があると思います。
So, you really do, with big data, wanna be clear about what parts of your activities that you wanna use data for.
常に弱者の立場
Always the Underdog
フィヒター:
Fichter:
もう一つお伺いしたおのが、御社の番組だけではなく、社風も、興味深いですよね。
Another thing I'd like to ask you is because not only your shows are interesting, but your company culture is, too.
いまや御社はますます成長し、もはや弱者ではないのに、どのようにして革新的でい続けられるのでしょうか?
Um, and I'd like to know now that you're becoming bigger and bigger, and you're not the underdog anymore, how do you try and keep innovative?
ヘイスティングス:
Hastings:
いえ、私たちは、ものすごい弱者ですよ。
Oh, we are so much the underdog.
何しろ、私たちのコンテンツ制作予算は、およそ30億ドルですから。
So, uh, our content budget is about $3 billion.
そして、ZDF(第2ドイツテレビ)はここ(ドイツ)だけでも80億ユーロです。
And ZDF (Zweites Deutsches Fernsehen), just here, is 8 billion euros.
いいですか、そして、そこにNHKやBBCやNBCやSkyなどを合わせると…。
OK, and then you add NHK, and BBC, and NBC, and Sky, and ...
世界中でどれほどの制作費が使われているかを思うと、わが社は世界のエンターテインメント市場において、ごく小さな存在にすぎません。
When you look at how much is spent on production around the world, we are such a tiny fraction of the global entertainment market.
ですから、質問にお答えすると、自分が成功していると感じたときには、自分が競っている状況を、別の視点でとらえ直し、常に弱者の立場にいるように、することです。
So, to answer your question, when you feel successful, then you reframe the lens in which you compete so that you're always the underdog.
私が常に考えているのは、歴史の流れのなかで、私たちの取り組みがいかに小さいものか、ということです。
I'm always thinking in the scheme of history, how small our efforts are.
そして、私はなるべく多くの歴史書を読むように心掛けていますが、その意識が、地に足を着けさせてくれているように感じます。
And I try to read a lot of history, and I think that keeps me grounded.
どれだけ頑張ろうと、情熱をもって仕事に取り組もうと、長い目で見れば、われわれは極めて漸進的な貢献しかしていないのだ、ということです。
Even though we try really hard, we're passionate about what we do, that in the long term, we're making, you know, still very incremental contributions.
ネットフリックスでの日々
Life at Netflix
フィヒター:
Fichter:
ご自身のオフィスを持たないということは、どんな重要性があるのですか?
How important is the fact that you don't have an office?
ヘイスティングス:
Hastings:
そうですね、ここにいらっしゃる皆さんの多くも、オフィスをお持ちでないと思います。
Uh, well, probably many people in the audience don't have an office.
共同スペースで仕事されるでしょうし、大企業のCEOにしては珍しいというだけでしょう。
Uh, you work in a communal space, and I suppose it's only novel for a large company CEO.
しかし、私はこの5年間、オフィスなしでやってきました。
But I've lived for the last five years without an office.
それの何がいいかと言うと、常に会社中のほかの人の元へ、私が訪れることになるという点です。
And what I like about it is it keeps me visiting other people throughout our offices --
皆が私のところに来るのではなく、私の方から出向くわけですから。
'cause I'm going to them, rather than them coming to me.
おかげで、私はより親しみやすい存在となり、権力者という感じも薄れます。
So, it makes me more approachable and less imperial,
それは、とても役に立ちます。
uh, so that's very helpful.
ただ、もう一つ隠れた利点としては、私が早く退社しても、誰も気づかないのです。
But the other secret part about it is I can go home early and no one notices.
フィヒター:
Fichter:
ハハハ。なるほど。
Ha-ha. OK.
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