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2017年5月12日金曜日

アメリカ外交 American diplomacy[The Economist]


米国外交の伝統:
American diplomacy

国務省軽視は大きな禍根を残す
A tradition traduced

(英エコノミスト誌 2017年4月29日号)



米国には誇らしく効果的な外交の伝統がある。それが今、貶められている。
The State Department is far from perfect.
But the administration's treatment of it is doing some real damage.



ほとんどの米国人は知らなかっただろうが、昨年の大みそかに米国の外交官たちは恐らく、中央アフリカで大量殺戮を未然に防いでいた。
Few Americans would have know it, but on New Year's Eve their diplomats probably prevented scores of killings in central Africa,

戦争を防いだ可能性もある。
and perhaps a war.

コンゴ民主共和国(旧ザイール)で長らく専制政治を続けているジョゼフ・カビラ氏は、大統領の任期が切れた後もその座にしがみついていた。
President Joseph Kabila, Congo's long-stay autocrat, had refused to leave power, as he was obliged to do.

これに腹を立てた人々が首都キンシャサの街頭に繰り出し、カビラ氏の治安部隊が出動しようとしていた。
Angry protesters were taking to the streets of Kinshasa and Mr Kabila's troops buckling up to see them there.

しかし、米国務省がアフリカ大湖地域特使として派遣していたトム・ペリエロ氏とジョン・ケリー国務長官(肩書はいずれも当時)が、価値観に基づいて行動する超大国の代表者らしい高潔な強引さと巧みな交渉術の合わせ技で説得にあたったことも手伝って、カビラ氏は折れた。
Yet through a combination of adroit negotiating and the high-minded pushiness that comes with representing a values-based superpower, Tom Perriello, the State Department's then special envoy for the Great Lakes, and John Kerry, the then secretary of state, helped persuade Mr Kabila to back down.

カトリック教会の仲介により、権力の共有と今年中の退任が約束された。
The resulting deal, brokered by the Catholic church, committed Mr Kabila to a power-sharing arrangement and retirement later this year.

実現すれば、コンゴでは初めての平和的な政権移行になる。
That would represent the first-ever peaceful transition in Congo.

だが、実現の見込みは薄い。
But it probably won't happen.

この3週間後、米国ではドナルド・トランプ氏が大統領に就任し、ケリー氏とペリエロ氏を含む100人あまりの政治任用職員が国務省を離れた。
Three weeks later, Donald Trump became president and the State Department's 100-odd political appointees, including Mr Kerry and Mr Perriello, shipped out.

米国の政権交代では普通に見られる光景だ。
That is normal in American transitions.

しかし今回は、トップクラスの職業外交官も任を解かれた。
But the most senior career diplomats were also pushed out,

これは普通ではない。
which is not.

しかも今のところ、新たに国務省にやって来たのはケリー氏の後任で、石油会社エクソンモービルの元経営者として名高いレックス・ティラーソン氏だけだ。
And only Mr Kerry has so far been replaced, by Rex Tillerson, a well-regarded former boss of Exxon Mobil.

ティラーソン氏は国務長官になろうという野心など持っておらず、そのポストに就くために面接を受けていることもトランプ氏に言われるまで知らなかった。
He had no ambition to be secretary of state -- or knew he was being interviewed for the job -- until Mr Trump offered it to him.

米国の外交政策の代弁者になったティラーソン氏は、長官としての資質を備えていることは間違いないにもかかわらず、公の場であれこれ詮索されるのを嫌うという、石油会社の社員のスタイルを維持している。
Now installed as the voice of American foreign policy, he has maintained, notwithstanding his undoubted qualities, an oilman's aversion to public scrutiny.

 ティラーソン氏は記者会見を開いたり、外国訪問の際に現地の米国大使館を訪れたりすることはめったにない。
He rarely speaks to journalists or visits American embassies on his trips abroad.

トランプ氏が連邦議会に近々提案する国務省予算31%削減案の調整という、厄介な仕事のことで頭がいっぱいのようだ。
He appears absorbed by the ticklish task of arranging a 31% cut in his department's budget, which Mr Trump will shortly propose to Congress.







2016年11月21日月曜日

米英、排他的な選挙結果







イギリスでは、アメリカ大統領選挙におけるトランプ氏の勝利を

「アメリカ版BREXIT(EU離脱)」

とメディアは伝えました。



イギリスとアメリカ、予想外の結果をもたらした2つの選挙の共通点は?



若い人ほど現状維持を望んでいた


年齢別では、トランプ氏とクリントン氏の支持は45歳を境に、若い人たちがクリントン氏、中高年層は過半数がトランプ氏を支持。


一方、イギリスの国民投票でも、45歳を境目に残留と離脱で割れた。若い世代は残留、45歳以上の中高年層は、離脱を選択。



都市部ほど現状維持を望んだ



住む地域別では、アメリカは都市部で過半数がクリントン氏、逆に地方ではトランプ氏に6割が投票。イギリスでも大都市でEU残留、地方では離脱が目立った。






世界に広がる経済格差。

米英2つの選挙に見られたように、世代間や地域間の溝も深まっている。



概して、年寄ほど、そして地方ほど、排他的な傾向が強まっている。





出典:NHK時論公論
「反グローバル化にどう向き合うか」



2016年11月15日火曜日

動くハワイと歴代天皇







ハワイは年間8cmずつ、北西へ移動しているという。

「前に、ハワイが日本に近づいているって学びましたよね?」

それはなぜか?

というのも、ハワイ諸島の乗っている太平洋プレートが東から西へ、つまりアメリカから日本の方角へ移動しているからだという。



移動するハワイ



ご存知のとおり、ハワイは火山の島である。

500万年前の噴火が「カウアイ島」を、350万年前の噴火が「オワフ島」を、そして50万年前の噴火が「ハワイ島」を生んだ。

ハワイ諸島はホットスポットとよばれる、マグマが地表に噴き出るスポットに位置している。そのため、長い年月をかけて、次々と新しい島が生み出されているのである。







「なるほど〜。ハワイはホットスポットでできた島なんですね。でも、どうしてハワイ諸島は年代順に並んでるんですかね?」



年代順にならぶハワイ諸島



それは先に示した、太平洋プレートの移動が関係する。マグマの噴出孔であるホットスポットの位置は変わらない一方で、プレートは西へ西へと移動する。すると、できた島は順ぐりと西(正確には北西方向)へ動いて、新しい島に場所を譲るのである。






「そのことが、ハッキリと目で見てわかる地図があります」

海底の地形をみると、ハワイ諸島からカムチャツカ半島へむけて、島々が点・点・点ときれいに列をなしているのがハッキリわかる。これが火山列。噴火によって出来た島々がプレートの移動によって順ぐりと北西方向へ移動していった軌跡である。

「で、ここ。明治海山っていうんだけど、これじつは7,200万年前に、いまのハワイ諸島でできたものなんだ。明治海山はハワイからはるばる6,000kmも移動しきたんだって」

ハワイからカムチャツカに至る火山列を、正式には「天皇海山群(Hawaiian-Emperor seamount chain)」とよぶ。「天皇」とは日本の天皇のことで、推古、仁徳、応神、光孝、雄略、桓武など、歴代天皇の御名がそれぞれの海山名に冠せられている。



天皇海山群



しかし、なぜ日本の天皇の名前が?

日本人が発見して付けたのだろうか?

いや違う。命名者はアメリカ人の海洋学者、ロバート・シンクレア・ディーツ(Robert Sinclair Dietz)だ。ディーツはフルブライト研究者として東京大学に留学し、海上保安庁水路部において研究を行っている(1935)。杉山明氏によれば、ディーツは日本の古代史にたいへん興味をもっていたらしい。


ちなみに、日本とハワイのあいだの距離は6,000km以上。年間数センチずつの移動で、ハワイが日本に到達するには、単純計算で7億年は必要になる。

さらに、海山列の軌跡をみると、移動方向は西へ向かっている時期もあれば、北へ向かっている時代もある。7億年後、ハワイが日本に着くのか、それともロシア、はたまたフィリピンか? そもそも現在のハワイ諸島が7億年間も海上に出ていられるのか?







出典:NHK高校講座 地学基礎




2012年9月20日木曜日

人命の犠牲をともなうエネルギー生産


過去30年間における「発電にともなう死者数」をみると、先進国では「石炭」利用にともなう被害が最も大きい。とくに「採掘段階」が最も危険だ。石油と天然ガスでは、事故の大半が「配送段階」で起こっている。原子力では「発電段階」のリスクが大きい。



年間発電1億kWあたりの死者数(生産段階)

石炭………12.00人
石油………9.37人
天然ガス…7.19人
原子力……0.73人
水力………0.27人
風力………0.19人
太陽電池…0.02人

スイス、パウル・シェラー研究所調べ



しかし、人的被害で最も大きな部分を占めるのは、直接的な「事故」ではなく、より間接的な「環境汚染」によるものだという。たとえば、化石燃料を燃やす発電所から排出される「微粒子」による大気汚染は、深刻な健康被害をもたらしている。

肺炎(入院件数) 4,040
心血管障害(入院件数) 9,720
早死に 3万100
急性気管支炎 5万9,000
慢性気管支炎 60万3,000
仕事の欠勤 513万

以上、アメリカにおける1年あたりの平均件数。



出典:日経サイエンス 2011年 12月号
「エネルギーに伴う人的犠牲」



なぜ、都市の住民は長生きなのか?


都市は、住民たちに「健康」をもたらすようだ。

世界の大都市、ニューヨークの住民の平均寿命は、全米平均よりも「1年以上長い」。



それは、なぜか?

高齢者がなぜ長生きなのかは判然としないが、「若年層」に限っては、その理由は明白だ。

35歳未満の若年層における主な死因は「交通事故と自殺」だが、都市部ではそのいずれもが極めて少ない。ニューヨークの交通事故による死亡率は、アメリカ全体に比べて「70%以上低い」。

一杯ひっかけた後に地下鉄に乗るのは、酔っ払って車を運転するよりも、ずっと安全だということか…。



出典:日経サイエンス 2011年 12月号
「都市の力 革新のエンジン」