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2012年9月20日木曜日

都市、バンザイ


「村では女性が夫と親族に従い、雑穀を粉にひいて歌うのが全てだった(Whole earth discipline)」

そんな時代は今や昔、2008年に農村人口と都市人口の逆転が起こり、いまや世界の都市人口が総人口の半分を超えている。20世紀に入り、都市人口は2億5,000万人から28億人へと10倍以上に急増したのである。



かつて、アメリカの建国の父たちは、都市を「貧困と犯罪、環境汚染、不健康の中心」であると考えていた。しかし、それは本当か?

上下水道への投資の甲斐あって、先進諸国の都市は疫病の巣から健康の砦に変わった。自動車事故やピストル自殺による死亡リスクは都市生活者の方が低い。

ちなみに、世界10大都市域のランキングでは、ずっと日本の東京都市圏(人口3,670万人)が1位だ。



出典:日経サイエンス 2011年 12月号
「都市の力 知恵を生む場所」

祖父母に栄えた人類は、祖父母に耐えられるのか?


クラピネ遺跡(クロアチア)から発掘された「ネアンデルタール人」で、30年以上生きた者は皆無だったという。また、シマデロスウエソス遺跡(スペイン)においても、35歳以上生きた個体はマレであった(歯の摩耗具合をもとに推定)。

ネアンデルタール人すべての寿命が30歳前後だったかどうかは不確かにせよ、その寿命は現生人類よりもはるかに短かったことが推測されている。

もし、15歳で子どもを産むとしても、その親が祖父母になるのは30歳。そう考えると、少なくとも30歳以上まで生きなければ、子・親・祖父母の3世代は揃わない。つまり、30歳以上まで生きるのがマレだったネアンデルタール人たちには、「祖父母があまりいなかった」と考えられる(成人10人に対して、祖父母は半分以下の4人)。



一方、ヨーロッパにいた現生人類はネアンデルタール人よりも長寿であり、成人10人につき、祖父母層はその倍の20人は存在したと推定されている。つまり、我々現生人類は3万年ほど前から、「祖父母」という家族形態をとっていたと考えられるのである。これは動物界では極めて異例のことである。なぜなら、普通の動物は次世代を生み育てれば、親世代は死ぬのだから。

そして、その祖父母たちの知恵や伝承が、さらに現生人類の寿命を伸ばしたとも推測される。この長寿命化(高齢化)の好循環は現生人類の人口増をもたらしたであろうから、今の繁栄の礎にもなったものと思われる。

ところが現在、凄まじいまでのスピードで進んだ高齢化は、人類にとっての重い負担ともなりはじめており、かつての好循環は悪循環ともなりつつある。しかしまあ、高齢化により栄えた人類が、その高齢化で衰えようとしているのは、なんとも皮肉な因果ではあるまいか。



出典:日経サイエンス 2011年 12月号
「祖父母がもたらした社会の進化」

都市のマジック。プラス15%の法則


都市は人口が多いほど、「分け前」も多い。

たとえば、ある都市の人口が2倍になると、その平均所得は2倍以上になるという。ボーナス的に「プラス15%」が加算されるのだ。この法則は、人口4万の都市が8万になろうが、その100倍の400万都市が800万になろうが、変わることなく機能する。

一方で、都市が必要とする資源やエネルギーに関しては、これと全く逆の法則が成り立つ。都市の人口が2倍になれば、インフラ設備(電気・水道・道路など)が2倍必要となるわけではない。それよりも「マイナス15%」少なくて済むのだ。



都市の人口が増えるほどに、生産性が増して収入が15%上乗せされ、その一方で出費は15%もカットできる。これが「都市マジック」だ。

さらに、人が集まるほどイノベーション(革新)も加速する。古くはプラトンとソクラテスが都市国家アテネに、ガリレオとミケランジェロはルネサンス期の都市フィレンツェに、そしてスティーブ・ジョブズとウォズニアックはシリコンバレーの大都市圏に暮らしていた。都市におけるイノベーションの加速は、特許出願数の増加となって現れる。



なぜ、都市ばかりが不思議な動きを見せるのか?

人口が増えれば、非効率なことは排除される力が働く。たとえば、高い家賃を払っているのなら、それに応じて価値の高いものを生み出す必要が生じる。その結果、収益性が高まれば、都市の価値が上がり、家賃はもっと高くなる。そうなれば、さらに相当の価値を生み出さなければならなくなる。

こうしたフィードバック・メカニズムが、都市の富、そしてイノベーションを常に「人口増加分プラス15%」に保ち続けるのである。



出典:日経サイエンス 2011年 12月号
「少ない資源から多くを生み出す都市」

なぜ、都市の住民は長生きなのか?


都市は、住民たちに「健康」をもたらすようだ。

世界の大都市、ニューヨークの住民の平均寿命は、全米平均よりも「1年以上長い」。



それは、なぜか?

高齢者がなぜ長生きなのかは判然としないが、「若年層」に限っては、その理由は明白だ。

35歳未満の若年層における主な死因は「交通事故と自殺」だが、都市部ではそのいずれもが極めて少ない。ニューヨークの交通事故による死亡率は、アメリカ全体に比べて「70%以上低い」。

一杯ひっかけた後に地下鉄に乗るのは、酔っ払って車を運転するよりも、ずっと安全だということか…。



出典:日経サイエンス 2011年 12月号
「都市の力 革新のエンジン」