普通、氷は水に浮く。
ところが、「沈む氷」もあるという。
水に沈む氷とは? |
それは「重水(じゅうすい)」でつくられた氷。
ところで、重水って何だ?
水素の同位体が「重水」をつくる |
重水は、普通より重い「水素」から成っている。
普通、99.9885%の水素の重さは「1」である。ところが稀に、0.0115%の割合で重い水素、いわゆる「重水素」が自然界には存在する。その質量数は「2」、中性子一個ぶんだけ重くなっている。
実際に、重水素でできた水、重水100mlの重さを測ってみると「109g」。普通の水なら100gだから、約10%ほど重いことになる。これが「沈む氷」の正体である。
同位体は「中性子」の数がちがう、同じ元素 |
ところで、極く稀に、中性子が2個もついた「三重水素」という、さらに重い水素も存在する。
たいへん不安定な「三重水素」 |
三重ともなると、さすがにバランスが悪い。
そのため、別の原子核に変わろうとして放射線をしきりに放出することになる。この状態を科学的には「放射性同位体」と呼ぶ。
炭素の「放射性同位体」 |
水素だけに限らず、炭素にも同位体があり、ごく微量、放射性を発する同位体も存在する。
放射性炭素による年代測定 |
質量数14の重い炭素、C14は物質の年代測定を可能にする。
というのは、放射性同位体という存在はとても不安定なため、放射線を発しながら、ついには「別の元素」に変化してしまう。炭素14の場合は質量数14のチッソに成り上がる。
チッソに変化する炭素 |
その成り上がりのパーセンテージは、一定の割合で決まっているので、物質に含まれる炭素14の成分比を調べることによって、その物質の年代が測定できるのである。
炭素14の自然界での割合は決まっている |
時間が経つと、炭素14だけがチッソに変化する。 |
5730年たつと、放射性同位体である炭素14の存在量は約半分に減る(半減期)。
その倍、1万1460年たつと、さらに半分、元の量からは4分の1に減る。
どんどん減る炭素14 |
また、放射線を発する物質は、測定が可能になる。
たとえば、リンの放射性同位体を調べると、その植物内での移動が追跡できる。カルシウムやマグネシウムも同様であり、植物内での吸収のスピードに差があることが確認されている。
実用可能性としては、肥料の最適な配分を知ることにつながる。
放射線を発する物質は測定が可能 |
出典:NHK高校講座「化学基礎」
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