2016年11月9日水曜日

木星の「オーロラ」



地球のオーロラは「太陽風」によって発生します。

秒速800kmにもなる電子や陽子などの粒子が、地球の大気に衝突することでオーロラが発生するという仕組みです。そのため、太陽風の強い強弱を受けて大きくなったり小さくなったりします。







しかし、木星のオーロラは違います。

これは人工衛星チャンドラがX線カメラで撮影した木星のオーロラです。木星の両極に、太陽風の強弱に関係なく光り続けています。しかも、地球のオーロラの1,000倍のエネルギーをもつという巨大さ。いったいなぜ、これほど強く光り続けることができるのでしょうか。



人工衛星チャンドラの撮影した木星オーロラ



カナダに生まれ、小さい頃からオーロラに親しんできた、ランディ・グラッドストーン博士。木星オーロラの魅力に取りつかれ、今回のジュノー計画にもオーロラの分析で参加しています。

ランディ・グラッドストーン博士
「木星のオーロラは、地球のオーロラよりも1,000倍も明るく大きいのです。わたしは何がこの木星のオーロラを生じさせるのか、ずっと関心があったのです」

グラッドストーン博士は、木星オーロラの原因は木星の衛星イオにある、と言います。イオには太陽系最大の火山活動があり、そこから大量の粒子が常に放出されています。一方、木星には巨大な磁気圏があり、太陽とは反対の方向に尾をひくように伸びています。

この磁気圏に、イオから放出された粒子がとらえられます。粒子は、木星の自転によって生じる遠心力で磁気圏の外側に流され、その大部分が磁力線をつたって木星の極に流れ込みます。これが木星の大気に衝突することでオーロラが発生するという仕組みです。

このように、木星のオーロラは衛星イオの火山活動と木星の自転によって起こります。そのため、太陽風に関係なく光り続けるというのです。



衛星イオのつくる木星のオーロラ



そして遂に、史上初となる至近距離での木星オーロラの撮影がおこなわれました。それがこちら。赤外線カメラがとらえた木星のオーロラです。直径は地球3個分の大きさ。色が明るいところほどエネルギーの量が多いことを示しています。



赤外線カメラによる木星のオーロラ



さらに、グラッドストーン博士が驚いたのが、もう一つのオーロラ画像でした。それがこちら。紫外線カメラで、北極の真上からオーロラを写した画像です。ここには木星の自転だけでは説明のつかないオーロラがありました。最も大きなオーロラとは別に、小さなオーロラの光が複数、存在していたのです。

グラッドストーン博士
「これは木星の衛星たちの痕跡です。木星のオーロラはいくつもの要因が重なってできるものだったんです」



木星のオーロラには、さまざまな衛星が影響していた



衛星たちの痕跡とは、いったい何なのか? 木星にはイオのほかに、エウロパ、ガニメデなどの衛星が存在しています。じつはこの画像が撮られたとき、3つの衛星はそれぞれこのような位置にいました。そして、これらの衛星と木星は磁力線によって結ばれています。この磁力線に沿って粒子が木星の極に入り込んだというのです。さまざまな奇跡が重なってできた絶景、それが木星の巨大なオーロラだったのです。







出典:NHK サイエンスZERO
「木星最接近! 探査機ジュノー最新報告!」


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