2012年9月26日水曜日
ウイルスたちの成せる業
マイマイガの幼虫、つまり毛虫は、ある種のウイルス(バキュロ・ウイルス)に感染すると、やたらと行動的になる。普段、天敵を恐れて夜しか活動しないのに、そのウイルスに感染してしまうと、昼間でも葉っぱの上に出てきて、木のてっぺんまで登ってしまうのだという。
毛虫を必要以上の行動に駆り立てるのは、ウイルスの繁殖のためだ。危険な昼間に行動する毛虫は死ぬ確率も高い。毛虫が死ねば、体内にいたウイルスは散り、新たな宿主へと感染することができるようになる。
さらに、そのウイルスは「脱皮」を阻害する。というのも、脱皮させてしまうと、毛虫はしばらく何も食べなくなってしまう。それではウイルスに不都合。脱皮をさせずにおけば、ずっとエサを食べ続けてくれる。
また、やたらと交尾させる別のウイルスもいる。そのウイルスに感染した蛾は、交尾した直後でも、新たなフェロモンを出して、すぐに別のオスを呼び寄せる。盛んに交尾を繰り返させることで、ウイルスの拡大するチャンスも盛んに増えるというわけだ。
ところで、人間はそれらのウイルスには感染しないのか?
もしかしたら、すでに感染しているのかもしれない。現代の人々は昼間のみならず夜間もしきりと活動を続け、食べなくていいほど食べ続ける。さらには、年がら年中、交尾にいそしんでいたり…。
ウイルスにとっては、宿主がたくさん行動してくれるほうが、繁殖の機会は増す。もちろん、たくさん食べてくれた方がいいし、たくさん交尾してくれた方がいい。
はたして、現代人はウイルスに操られているのだろうか?
人間の欲望の正体は?
出典:日経 サイエンス 2012年 01月号
「毛虫を操るウイルス」
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