2012年9月22日土曜日

無知を知ったDNA解読


世界初のヒトゲノム解読には、30億ドル(2,400億円)を超える予算と、10年もの歳月がつぎ込まれた。

しかしその結果たるや、ヒトゲノムの実に98%が「わけのわからない謎の領域」だったという事実のみである。



ゲノムというのは、DNAに刻まれた生命の情報のことであり、そこには身体の材料となる「タンパク質」の作り方が記されていると思われていた。

確かにそうだったのだが、タンパク質の作り方を記している部分は「たったの2%」。そして、残りの98%の領域からは、60年もの間、単なるDNAのコピーとしか思われていなかった「RNA」が生み出されていたのである。



ある仮説によれば、DNAは情報を保管しておくための「図書館」にすぎず、本当の主役はRNAだということになる。

DNAは情報の記憶しかできないが、RNAはその記憶に加え、タンパク質のように酵素として働くこともできる。いまはまだ分からないことの多いRNAだが、その働きの多彩さはDNAの及ぶところではない。

それゆえ、最初の生命を生み出したのはDNAではなく、RNAだったのではないかという「RNAワールド仮説」なるものも提唱されている。コピーだと思われていたRNAが実は元データで、DNAの方がバックアップだったのか?



DNAさえ解読すれば、生命の神秘が明かされるとおもっていた人類。

ところが、それは単なる入り口にすぎなかったようだ。

まだまだ未知のRNA大陸、その探検は口火を切ったばかりだ。



出典:WIRED (ワイアード) VOL.4 (GQ JAPAN2012年6月号増刊)
「生命の『コード』は謎だらけ」

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